ワイン食堂「幸」(札幌市中央区)

ワイン食堂 幸の入り口
ワイン食堂 幸の入り口

 自然派ワインとフードが日替わりでそろう、「ワイン食堂 幸」。ナチュールワインの店が多く入居するプレイタウンフジ井ビルの中でも、「ぴよ」と「ぴょん」ともに一番のお気に入りです。その理由は、ワインの品ぞろえに加え、どこか和の味わいがあり、ワインによりそうお料理、店主の吉川幸子さんの人柄とおもてなし。ここは毎回、間違いなく満足できる「星、5つ!」なお店です。

LOVE SPARKLING

 ワインは白と赤が各3種類ほど、泡、オレンジも1~2種類が常時用意され、どれもグラスで飲めます。たいてい北海道産ワインが1~2種類あり、残りはインポートですが、どれも自然派です。この日は2人とも、カリフォルニアの白泡「LOVE SPARKLONG」で乾杯。すっきりとドライで、柔らかい酸があり、さわやかな飲み口です。

ノラポン・ブラン アンベトン

 1杯目はもちろん瞬殺。入店直後に農楽蔵(北海道北斗市)の「ノラポン・ブラン アンベトン2020」があるのを見ていたので、2杯目はこちらで。農楽蔵のホームページを見ると、ノラポンシリーズは「北海道らしさ」を追求しているそうで、エチケットには、海辺でくつろぐクマやキツネ、フクロウが描かれ、「ノラポン、ノリノリポン、スッポンポン、ピースピース」と楽しそうです。「アンベトン」とは、フランス語でコンクリートタンクという意味だそう。華やかで香りが高く、すっきりしていますが、丸みもある味わいです。

キンキンに冷えたおでん

 幸さんでは、冬は暖かい、夏は冷たいおでんが名物のひとつ。ワインにおでん?と疑問に思う人もいるかもしれませんが、ナチュールの柔らかく複雑な味わいと、おでんの出汁感のマリアージュは、お互いのおいしさを引き立て合い、ぴったりです。

 この日は8月半ば。冷たいおでんの大根(220円)とトマト(440円)、ブロッコリー(330円)、半熟卵(220円)をシェアしていただきます。出汁がしみしみの大根、フルーツトマトの甘さと柔らかい酸味は、すっきりとした白泡にぴったり。「ぴよ」が大好きな半熟卵は、絶妙なとろーり加減です。そして、ブロッコリー。素揚げしてあるのですが、昆布とかつおがしっかりきいた出汁に、油のこくが加わって、一気に味変。「ぴょん」はスープカレーに入っている、油を吸った素揚げブロッコリーがどうにも苦手で敬遠しているのですが、幸さんの素揚げブロッコリーは、胸焼けなんて無縁、こくと深みだけをもたらしてくれるのです。

ヤングコーンのヒゲ巻きフリットと熊啄木 ピノ・グリ

 もちろん、グラスは空っぽ。今日のワインのラインナップを尋ねると、森羅郷(北海道余市町)の白「熊啄木(くまげら)ピノ・グリ2023」があり、2人とも即決。実は、熊啄木のピノ・ノワールとピノ・グリの混醸を初めて飲んだ時に、2人ともおいしさに大感激、その後は見かけるたびに買い集めています。すぐ飲んでもよし、数年寝かせるのも楽しみ…というワインです。そのピノ・グリ単品醸造は初めましてです。

 余市町登地区のブドウ農家、笠井行雄さんのブドウで山田堂が醸造しています。2023年は猛暑で、さらに鳥の食害が激しかった年。エチケットの後ろには「僅かに収穫した果実から造られたのがこのワインです」と書かれていました。一口目はアプリコットのような、桃のような香り。その後、酸と苦み、果実味がきます。複雑ですが柔らかく、優しい味わいです。

 そこへ、「ヤングコーンのヒゲ巻きフリット」(880円)がやってきました。ヤングコーンのヒゲを衣にしており、カダイフみたいにサクサク、パリパリ。ヤングコーンの優しい甘みに、たっぷり振りかけられた粉チーズと黒胡椒のパンチが加わって、ワインだけでなく、どんなお酒にも合いそうです。

サーモンのムニエル エリンギと小松菜

 続いてやってきたのは、「サーモンのムニエル エリンギと小松菜」(1,540円)。大ぶりで分厚い立派なサーモン!皮はカリッと、身はふっくら、火入れが絶妙です。厚めにカットされたレモンがいい仕事をしています。サーモンのおいしさもさることながら、添えられたエリンギや小松菜の火入れや塩味、油のまとい具合がちょうどよく、「添え物」と呼ぶのはしのびないくらいです。

KOYACHI(左)と雅

 もちろん、ワインは止まりません。ランセッカ(北海道余市町)の赤「KOYACHI 2024」とドメーヌ・ブレス(北海道仁木町)の赤「雅 2022」をいただきます。KOYACHIは「小谷地川」の流れる地区にある畑でとれたピノ・ノワールとツヴァイゲルト・レーベを主体に造られています。ドメーヌ・ブレスは2024年に名称を変えており、このワインが造られたのは、前身のル・レーヴ・ワイナリー時代。お祝いの品に付ける水引をモチーフにした切り絵のエチケットが特徴です。

鮎のコンフィとキュウリ、ドライトマトのスパゲティ

 「鮎のコンフィとキュウリ、ドライトマトのスパゲティ」(2,200円)もやってきました。荒くほぐした鮎のコンフィのほろ苦さと清涼感のある香り、キュウリのみずみずしさや青っぽさが一体化し、旨みが凝縮したドライトマトでこくのある味わいにまとめられています。

 この後も、イタリアやフランスのオレンジ、ドイツの白など…ついつい、グラスを重ねてしまいました。

 幸さんのフードの特徴は、どこか和のテイストを感じるところ。冒頭のおでんもそうですが、よくオーダーするのは、「すぐ出るおつまみ」。「大根とキュウリの辛子漬け」や「結びこんにゃくの山椒煮」などの定番のほか、日替わりで「大葉のくるみ味噌巻き」、「トマトの土佐酢付け」など、おばんざい屋さんかと思うようなメニューも多くあり、さらにそれがワインによく合うのです。そして、小皿にちょこっとの分量で、1~2人でつまむのにちょうどよく、お値段も400円前後なのがうれしいところ。

 また、「ぴよ」と「ぴょん」が感激したのは、「薄いハムカツ」(770円)。「薄い」とある通り、5ミリに満たないハム。ぱっと見、薄焼きおせんべい。よく、ハムと衣がはがれてしまうハムカツがありますが、このハムカツは衣がしっかり密着し、食べている途中でハムから分離してしまうことはなく、サクッサクです。軽くて、空気を食べているかのよう。これは絶対、カロリーゼロです。

カウンター一番奥の席の近くには窓があり、外を眺めることができます

 おすすめしたいワインもフードもたくさんあるのですが、幸さんのあたたかく、ほんわかした人柄も、大きな魅力です。ここで飲んで食べて、幸さんとお話しすれば、嫌なことがあった日でも幸せな気持ちになること間違いなし。

 そんな優しい幸さんですが、来店者に対し、毅然とした態度でいくつかの「お願い」をしています。それは、「ワインと食事を楽しむ場なので、食べない、飲まない、しゃべりたいだけの方は利用を控えて」「過度な香水を付けての来店は控えて」といった、しごくまっとうな、どの飲食店を利用する時にも当てはまる「お願い」です。カウンター8席のみの小さなお店。困ったお客さんが1人いると、お店全体の雰囲気が変わってしまうと考えている「ぴょん」としては、当たり前のことだと思います。それを守ることのできる人は、ぜひぜひ行ってみてください。

店名/ワイン食堂「幸」
住所/札幌市中央区南3条西3丁目1プレイタウンフジ井ビル8階
電話番号/011-211-6946
営業時間/17:00~24:00
定休日/不定休
たばこ/禁煙

ぴょん

ぴょん

 食べること、飲むこと、楽しむこと大好き!海の幸、山の幸、それを生産してくれる人や料理をつくってくれる人たち、素敵な気持ちにさせてくれるお酒…。「味がいい」だけでなく、これがそろって「おいしい」が生まれます。私の「おいしい」を伝えられたら、幸せです。