
すすきの手前のビル5階。白抜きで店名が書かれた藍色ののれんをくぐると、清潔なL字カウンターの向こうで、白いうわっぱりを来た大将が「いらっしゃい」と出迎えてくれます。黙々と鍋に向かって手を動かす大将から「何にしましょう」と声をかけられると、店内に漂う出汁の香りに誘われて、ついあれも、これも、と頭をよぎります。でも、最初に注文するのは、ほぼきまり。大根と卵は必須、それに豆腐かがんも、姫たけのこ、ふき。このあたりを2人で1品ずつ頼んで、シェアするのが定番です。


しみしみながら、しっかり素材のおいしさを感じる大根も、卵をはしで割ってちょっと溶け出た黄身でまろやかになった出汁を飲み干すのも、おいしい。

でも、真骨頂はここからです。絶対に頼むのは、えのき茸としらたき。どちらも高級とはいえず、普段の食卓に載りそうな食材ですが、あなどるなかれ。えのきは一般的にスーパーで見る白いものではなく、茶えのき。香り高く、何よりシャクシャクとした食感は、ほかでは味わえません。しらたきは、断面が丸ではなく平たく、ちょっと不揃い。こちらも食感が独特で、いつも何の気なしに食べていた脇役の(だと思っていた)しらたきですが、ここでは主役級だと思うようになりました。両方とも、初来店のお客さんがカウンターにいたら、おせっかいながら、ついつい勝手にオススメしてしまうほど大好きです。

さらに、あったら必食なのが、みつば。一般的に出回っているものと香りが違い、柔らかいのにみずみずしいシャキシャキとした歯触り。みつばが苦手なぴよも、ここのみつばは大好物です。大将いわく、築地でもめったにお目にかかれない逸品で、見つけると大赤字覚悟で仕入れてしまうそう。料亭や高級旅館にしか出回らないとのことで、市場の人に「おでんにする」と言ったらあきれられたというほどの高級食材です。食べている人がみんな「おいしい、おいしい」と感激の声を上げるので、カウンターで1人が注文すると、つられてみんな、つい頼んでしまうという連鎖が生じる一皿です。

ほかに、ホッキやわかめ、たち(鱈の白子)、ねぎま(トロ)、のりなど、海の恵みも秀逸。注文が入ってから鍋に入れられ、同じ出汁で火入れしているのに、これらの具から出る旨みでまた格別な味わいになります。

このおでんのおいしさを一層引き立ててくれるのが、熱燗です。一平は、白鹿一択。シンプルな小1合の銚子がずらりと並び、注文すると大将が一つずつ、丁寧に燗を付けてくれます。大将は、ちょっと持ち上げて、片手で銚子をぎゅっと握って温度を確かめ、「最初の一杯だけね」と言って、お酌してくれます。小さめのおちょこ(ぴょん比)をくいっと傾け、一口。お腹がじわっと温かくなるのに、お酒の香りと味は飛んでいない、絶妙な温度。おでんをハフハフ、熱燗をきゅっというのを繰り返していると、銚子の底に穴が空いているのでは?と疑いたくなるほど、あっという間に空になります。
まあ、ぴよとぴょんほど、「あっという間」に空にしている人は、まず見かけませんが、それは一平のおでんと熱燗のうまさ、そして大将の気の利いた会話と控えめなおかあさんの気配りのおかげです。
| 店名/おでん一平 |
| 住所/札幌市中央区南3条西3丁目 克美ビル5階 |
| 電話番号/011-251-1688 |
| 営業時間/17:00~22:00 |
| 定休日/日曜、月曜、祝日 |
| たばこ/禁煙 |

